イベントレポート REPORTS

プログラム(1)

テレワークから始まる近未来。ワークスタイル×MaaS×地域活性を語る!

登壇者紹介

沢渡 あまね 氏|ワークスタイルの専門家として。あまねキャリア工房代表/株式会社なないろのはな取締役。日産、NTTデータ、大手製薬企業を経て現職。ITシステムの運用・開発マネージャー、グローバル展開と対応、社内広報部門での経験を持つ。生産性・企業価値・社員のモチベーションを向上するマネジメント改革や業務プロセスのコンサルティングなどを行う。著書に『職場の問題地図』『仕事ごっこ』(社)など、多数。

貝瀬 斉 氏|MaaSの専門家として。株式会社ローランド・ベルガー パートナー。2000年、三菱自動車工業に入社し乗用車マーケティング戦略室に従事。2001年にローランド・ベルガーへコンサルタントとして転籍する。その後、富士ゼロックスにてシニアコンサルティング、ドリームインキュベータにてビジネスプロデューサーを経て現職。自動車関連企業各社へコンサルティングを行う。経済産業省・中小企業庁の「素形材産業における価値起点化による稼ぐ力向上」プロジェクト、社内のバーチャルカンパニー「みんなでうごこう!」など参与案件は多数。

原子 拓 氏|セキュリティの専門家として。株式会社ラックSSS事業統括部シニアマネージャー/日本シーサート協議会 運営委員。1988年、日立情報ネットワーク(HINET)に入社しネットワーク関連の研究開発に従事。1991年にヤマハ発動機へ転籍、情報システム部門にてグローバルにインフラ・アーキテクチャ全般の企画を担当し、クラウド化、デジタル化を推進。2017年よりラックにて活躍。現在は、サイバーセキュリティ関連業務に従事する。実家のある浜松と埼玉(勤務地は東京)との2拠点生活を送っている。

平野 尚志 氏|テクノロジーの専門家として。ヤマハ株式会社。浜松市出身、1987年にヤマハ(当時:日本楽器製造株式会社)に入社。CD-Iや-ROM、-R関連のソフトウェア開発に従事する。ルーターの開発、ネットワーク機器の商品企画などを経て、現職。Webサービスの開発から営業企画、広報、市場分析などを手がける。ネットワーキングの応援メディア『ネツエン』、“音”で働き方改革を支援する『働く音改革』を主導。Twitter (@yamaha_sn)https://twitter.com/yamaha_sn?s=17

東京・浜松から各分野のプロフェッショナルが集まり、それぞれの専門分野から近未来の働き方を考察しました。「出勤できないときの代替手段」と捉えられることの多いテレワークを、「生産性向上」「企業のファンづくり」「ビジネスモデル変革」を実現する一歩先の働き改革へとつなげていきました。



パネルディスカッションの様子
▲午後からのパネルディスカッションには定員越えとなる40名以上が参加し、テレワークの事例や考え方に耳を傾けました。


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本ディスカッションのキーメッセージは「出社できない人のための単なる『非常手段』ではない!新たな価値を生み出すテレワーク」。テレワークにより生み出される近未来の価値とは、一体どのようなものでしょうか?

沢渡氏:これまでのテレワークを1.0、これからのテレワークを2.0と名付けたいと思います。テレワーク1.0では、現行の業務をテレワーク“でも”できるように制度や整備を進めて来ました。業務を見える化してスリムにしたり、ムダな業務をなくしたりするのがそうです。これからは、テレワークを通じて新たな付加価値を創造していく時代です。これをテレワーク2.0と位置付けたいと思います。






新たな付加価値を生みだす「テレワーク2.0」とは?

左:沢渡氏 右:貝瀬氏
▲左:沢渡氏 右:貝瀬氏


沢渡氏:残業削減も大切ですが、テレワークの本質は、自分(たち)の勝ちパターンを見つけることにあります。勝ちパターンとは、あらゆる社員がそれぞれの部署で、仕事に集中できてアイデアが浮かびやすい環境や仕事のやり方を実現することです。

マーケットはつねに変化しています。突発的な台風が来るなど、地球環境も大きく変化していますね。そんな中、今までの仕事のやり方を続けていては、“悪気なく” 負けパターンに陥ってしまうでしょう。ICTの力を使い、早く良い取引先やお客さまを見つけ、社内外の人ともコラボレーションできる働き方にシフトすること。その中から、新しい価値を生んでいこうとする意識が大切です。



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沢渡氏:今は、自社のオフィスにこもっていても答えの見つからない時代です。(日本一の時価総額を誇る)あのトヨタでさえも、昨年10月にソフトバンクと協業することを決めました(新会社「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)」を共同設立)。トヨタ1社だけでは、新しいマーケットをつくれない、新しい価値を生み出せないということだと思います。地方都市が単独で、あるいは東京が単独で、現代の課題解決をできるでしょうか?

浜松の皆さんが、例えば、東京や名古屋の人とつながりコラボレーションすると、新しいことが生まれる可能性があります人や知識、モノといった今あるリソースをお互いに掛け合わせることから、イノベーションは起こるのです。テレワーク(を実施する/推進する過程)によって、コラボレーションのきっかけを創出することが大切です。





テレワーク先進都市、東京。

原子氏



沢渡氏:ここで、東京と浜松間で2足のわらじ生活を送る原子さんにお話を伺ってみたいと思います。2拠点間の価値観やレベルの違いについて教えてください。

原子氏:東京では、テレワークが確実に進んでいます。理由は、単純に出勤が大変だからです。9:00に都心に出勤しようとすると、有楽町駅(東京駅至近の駅)では乗り換えなんてできないほど人が溢れかえっています。そんなに苦労して1時間かけて出勤するなら、家で仕事をできた方が良いと思いませんか?

とくに、今年はラグビーワールドカップが、来年にはオリンピック・パラリンピックが開催されます。開催期間中には、朝の6:00には家を出ないと出勤できない(計算です)。都会の人は、ワーケーション(※)のできる“疎開先”を今から探していますよ。浜松はチャンスです。新幹線のひかり号なら、東京・浜松間は1時間30分足らずですからね。



(※)ワーケーションとは|「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語。旅先で仕事を行うことや、リゾート地のように良い環境に身を置いて仕事を行うこと。




原子氏:一時期、義父の介護が必要になって浜松に戻ってきました。当時勤めていた企業では、介護をするためには休職しなければならないという取り決めがありまして。地元企業がこのままの働き方を続けては、浜松の人は東京に出たきり帰ってこなくなるのではないかと思いました。そんな危機感もあって、今回のテレワークデイズに参加させていただいています。





安心安全なテレワークのために必要なネットセキュリティ

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沢渡氏:テレワークを思いとどまる理由のひとつが「セキュリティへの懸念」だと思います。ネットセキュリティの考え方を教えてください。

原子氏:まず、テレワークを支えるインフラには3つあります。

・通信インフラ
・情報通信機器
・遠隔会議システム

原子氏:通信インフラとは、ネットワーク・回線のことです。情報通信機器とは、皆さんお持ちのスマートフォンやパソコンです。遠隔会議システムは、マイクロソフトさんのOffice365でもほぼ実現できますね(※参照:Office365のオンライン会議ソリューション)。

それらを使う上でのリスクを考えてみましょうか。

・紛失、盗難
・ウイルス感染
・盗聴
・ログ(データ通信の記録)取得

原子氏:さまざまな仕組みをクラウド化すると、セキュリティ保証がサービスに含まれていることがあります。テレワークを行う場所も考えなければなりませんね。人によっては、家族が自社のライバル企業にお勤めだということもあるかもしれませんし、お子さんがデバイスを触ってしまわないような注意も必要かもしれません。個人所有のデバイスを使用する場合は、万全のセキュリティソフトを入れましょう。公衆Wi-Fiの中には、(悪意をもって)データをスキャンしてくるネットワークもあります。





浜松版のテレワークを考える

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沢渡氏:「製造業においては、テレワークにできる仕事がない」。それについては、社員の育成や問題解決を外部で行うことで、テレワーク2.0に向かっていけると思います。今日のような場に来て学び、他企業と出会うことで、社内だけでは解決できない問題を解決するきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

原子氏:製造業務をテレワークにすることは難しいかもしれませんが、製造企画の部門などは全く問題ないのかなと思います。

沢渡氏:オフィスにいなくてもできる業務を抽出・設計してテレワークを進めていくと、優れた人材が集ってきます。地方では「レアな取り組みをしている企業」になるので、結婚や出産を機に大手企業を離職せざるを得なかった優秀な人たちが流入してきます。テレワークを進めることは、浜松の皆さんが他企業より抜きんでるチャンスになるんです。





オフィスの「音」を変えるヤマハの技術

平野氏



オフィス以外の場で働くとなれば、タイムリーでスムーズな通話ができる通信機器も求められます。楽器製造の過程で磨かれた音テクノロジーを持つヤマハが行う音改革について、平野氏が語りました。





ヤマハが実現したい「音」とは?

yamaha_audio_jpインスタグラムより
▲yamaha_audio_jpインスタグラムより



平野氏:ヤマハが目指している「音」って何だろうと、ずっと考えてきたんです。個人的な見解ですが「表現する人の気持ちがそのまま伝わる音」なのではないかと思うようになりました。ナチュラル・サウンドとして自然な音が伝わること。教会やスタジアムでの音の響きがCDから再現されること。

そのためには、反射音を科学してリアルタイムに制御する技術が必要なんですが、実は、ヤマハには反射音の研究実績があったんです。今では、異なる部屋の環境に合わせて快適に会話ができる技術として実用化されています

沢渡氏:午前中にダム際でテレワークをしていた時も、ヤマハ製のスピーカーフォンYVC-200で現地とこの会場とを繋いで会話をしました。



沢渡氏:私は普段、車での出張が多いので、YVC-200を使って車内で音声通話をすることもあります。クリアーな音声で会話ができますし、車内ならセキュアなので大手のクライアントにも安心していただけます。

貝瀬氏:音声をコントロールする技術で“車内”会議の生産性を上げていくと、モビリティ(移動)の価値が変わっていきますね。車内で2名が同時に電話会議を行えるようになれば、完全な個室がつくれるので。

沢渡氏:(そのような車内環境が実現できれば)東京ー浜松間ほどの距離ならば、間違いなく浜松に優位性が出てくると思いますね。





MaaSが生み出す近未来の価値

テレワークを支えるテーマのひとつがMaaS(※)です。テクノロジーの力で移動をより快適で自由なサービスへと発展させることは、立体的な課題解決につながるかもしれません。貝瀬氏のスピーチにそのヒントを見出していきます。



(※)MaaSとは|Mobility as a Serviceの略。直訳すると「サービスとしての移動」で、ICT技術を持ちいて移動をより快適で自由なサービスへと進化した人やモノの移動を指す。


移動を活性化するソリューション
▲みんなでうごこう!プロジェクトHPより

貝瀬氏:ローランドベルガーでは「創造生産性(R)」という考え方を大切にしています。「創り出した価値」/「かけた時間」という式で表され、投入した時間に対してどれだけの価値を顧客に提供できたかを示します。

働き方改革が叫ばれる中で、時間を圧縮していこうとする動きは全て分母へのアプローチです。本来、効率化は必要十分で良くて、「どのような価値を生み出したいか」というゴールを先に考えることが重要だと思います。





幸せと豊かさを実現するためのMaaSであるように

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貝瀬氏:日本では、MaaSは効率化の文脈の中で語られることが多いかもしれません。待ち時間を少なくしよう、乗り換え時間を短縮しようというように。しかし、効率を追求するだけでは、間違いなくGDPが縮小してしまいます。

移動を効率化して追及したいのは、豊かさや幸せではないでしょうか?例えば「こういう学びや体験が得られるから、今まで行ったことのないあの場所に行ってみたい」「面白い人がいるから、浜松まで出かけてみよう」ということです。その地域で「予定されていなかった移動」は、GDPの増大になります。遠方を訪れる人も、地元の人も幸せになる移動を叶えるのがMaaSという便利さであり、テクノロジーであれたら良いなと思います。

社内のバーチャルカンパニー「みんなで動こう!」でも、動きたくなる目的とそのために必要十分な移動手段というテーマで、自治体や地方企業の皆さんと議論しています。働き方改革についても同じこと(目的からの逆算)が言えると思います。生み出したい価値を実現するために、どんな働き方が望ましいのでしょうか。どこで働くかだけではなく、誰と議論するかも重要ですし、「ピンと来たときにアイデアをポンと発信できて、パーンと答えが返ってくる」議論の流れもつくれると良いですね。

冒頭に沢渡さんが仰ったように、MaaSやテレワークを代替手段としてではなく、より良いものを生み出すための手段にしていくことが勝ちパターンにつながると思います。





健全な組織のバリューサイクルを回すテレワーク

私たちは、コラボレーションによって新しいアイデアを生める人・組織・働き方にシフトしていかなければいけません。そのために必要なバリューサイクルという考え方を沢渡氏がレクチャーしました。


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沢渡氏:私たちの企業は何者であるのか、私たちの部署・職種では何ができるのかといった「私たちの価値」を発信していく必要があります(ブランディング)。

ぜひ、時間やきかっけをつくって議論してみてほしいんです。自社の存在価値は?経理の価値は?研究者の価値は?本業以外に時間を使って “仕事をした感” にまみれていないでしょうか。業務改善のためにも、外に出かけて学習していきましょう。

この(価値創出・育成と学習・業務改善からなる)コアサイクルを回していくことで、皆さんのファンが増えていきます。プロとして成長できている実感は、社員のエンゲージメントを高めます。エンゲージメントとは、その組織に対する愛着、技術や仕事に対する誇り・喜びといったものです。(ブランドとしての価値が高まっていくと)地域の外から私のような「浜松大好き」人間が集まってきて、コラボレーションしていく(イノベーションにつながる)と。このバリューサイクルを回すことこそが働き方改革であって、働き方改革=テレワークではないんですね。

さぁ、やらまいか!

さらに、浜松には「やらまいか精神(※)」というすごい強みがあるんです。地元の人も心をオープンにして、双方に情報をオープンにできることは強みです。仕事のやり方や仕組み(ソース)もオープンにしていきましょう。そこから生まれるコミュニケーションが、良い未来をつくっていくのではないかと思っています。



(※)やらまいか精神とは|「やろうじゃないか」という意味の遠州弁で、新しいことに果敢にチャレンジする姿勢のこと。志ある人を応援する気質のこと。