イベントレポート REPORTS

プログラム(2)

変化し続けることが生命線

堀内 保子 氏

堀内 保子 氏|愛知県岡崎市出身。日本マイクロソフトに入社13年目。US本社における国際広告営業部隊の日本担当はじめ、OEMでの流通・営業担当、クラウドビジネスの中部地区担当など。


時価総額1兆ドルを超え(2019年4月25日)評価を高めて続けているマイクロソフトにも「絶不調で苦しい時期があった」と赤裸々に語る堀内氏。荒れる社内に個人主義のメンバーたち。業績のV字回復の裏には、テレワークをはじめとする社内改革があったそうです。

堀内氏:働き方改革ーー。実は我々も非常に苦労してきて、改革してきた1社です。(働き方の)変化の背景や変化して何が良かったのかを、実際の変化を見てきた1人としてみなさんにシェアさせていただけたらと思います。

3歳の子を持ち、17時にはダッシュで “お迎え” に行かなければならない私の働き方をご紹介しましょう。定時退社は当たり前で在宅勤務も当たり前です。フレックス勤務にリモートワークも当たり前ですし、直行直帰はマストです。

そして、3種の神器と呼んでいる「モバイルパソコン・スマートフォン・Wi-Fi」をフル活用し、多くを求められるこの企業において日々インパクトを与える仕事を追求しています。

会議も場合によっては家で出席していますし、間に合わないときはスマートフォン越しに出席します。そうした働き方が当社では当たり前になっていますし、逆に当たり前になっていってほしいと思います。





勇気を出して変わること

勇気を出して変わること

堀内氏:今日のテーマは、CHANGE(変わること)です。とても勇気がいることですし、場合によっては痛みが伴いますが、CHANGEとは良いものだと皆さんにも思ってもらいたいです。1人ひとりから変えていけることもあります。「よしやろう」と奮い立ち、変えることをあきらめないでください。





知られざるマイクロソフトの危機的状況

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堀内氏:実は、マイクロソフトには、2000年の成功(体験)から抜けられない時期がありました。Windows XPの時代、我々は絶好調でした。それが、2017年には「GAFA(※)」と呼ばれるビッグプレーヤーに押されています。これらは、2000年にはまだない企業でした。正直なところ、私たちは、絶好調だったことにあぐらをかいていたんです。


(※)GAFAとは|Google、Apple、Facebook、Amazonの主要なIT企業の頭文字を取った略語。読み方、ガーファ。


ソフトウェアというモノづくり(物販型)からサービスを提供する(継続収入型)ビジネスモデルへの転換ができていませんでした。株価は下がる一方、人もどんどんいなくなっていくような、苦しい時代が続きました。

この絶不調の背景にあったのは、文化や組織の問題です。足の引っ張り合いや社内政治がまかり通っているような雰囲気がありました。連携しなければビジネスは進みません。結果として生産性は低くなり、遅くまで働いている人がたくさんいました。また、それを「かっこいい」とするような風土もあったんです。

無駄なコストもありました。さまざまな事業で急に人を増やしてテナントを借りたので、1時間に1回マイクロバスを拠点間に走らせていたんです。しかし、誰も乗りません。なぜなら、みんなタクシーを使っていたからです。

そうした文化がマイクロソフトを蝕み、売り上げや離職率に悪影響を与えていました。





マイクロソフトの「CHANGE」

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堀内氏:そのような状況ではダメだと思っていて、改革に着手したのですがうまくは進みませんでした。実は、改革が大きく進んだきっかけは、2011年に起きた東日本大震災だったんです。

震災の発生当時に東京にいた方はご存じだと思います。竹がしなるかのように高層ビルが揺れて、交通機関は麻痺しました。帰宅できない人が街にあふれて、私も歩いて4~5時間かけて自宅に帰れたものの、翌日も電車が動いていないので出社できません。

ただ、我々は、会社から3種の神器を与えられていました。上司に「電車に乗れ(出社でき)ません」とメールを送るとすぐに「一週間、在宅ワークにしろ」と返事が来ました。そう、我々も、出社することが当たり前だと心のどこかで思っていたんです。あのときにやらざるを得なくなって初めて、テレワークができることに気付きました


具体的な社内改革について


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堀内氏:実は、改革にあたって最重要だったのは企業文化でした。2014年にトップに就任したサティア・ナデラCEO。彼は、マイクロソフトの文化を変えた救世主と言えます。Growth mindset(成長マインド)を大切にしたんですね。成長するためには、自分自身がビジネスパーソンとして高みを目指すだけでなく、チームのことも考えます。個々人は、必ず善い行いをするようになるんです。「CEOのCは、カルチャーのC」という名言があるほど、(ナデラ氏は)ビジョンを持って企業文化を変えるということを大切にしました。


その2 オフィス・環境


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堀内氏:ここにいなければ仕事ができないというオフィス環境は非合理的ですし、BCP(事業の継続計画)も徹底されていないことになります。環境を整えていくことで、社員のマインドはだんだんと変わっていきます。今(のマイクロソフト)では、残業している人は「効率の悪い人」と思われます。マインドを変えるのは時間がかかることですが、一歩一歩と進めていけば組織は変わります。




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堀内氏:個人が最大限にポテンシャルを発揮するためには、わずらわしいルールはいらないと思います。見えない所でも頑張っている人やパフォーマンスを発揮している人が評価される制度があることです。マイクロソフトでは、評価基準のひとつにチームワークが入っています。360度評価と言って、上からも下からも横からもランダムに評価されます。また、男女や年齢の違いも関係なく、評価にあいまいさを残しません。そうした世界は若い人にとって魅力的で、競争に打ち勝っていく土台になります。




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堀内氏:(システム・ITサービスを)フルクラウド化しました。これにより、あらゆる業務をデバイス上で行えるようになりました。場所に縛られない働き方は、そうした変更から始まります。コミュニケーションを取るときは、メールよりもチャットの方が早いと思いませんか?私たちは、社内の連絡にはTeams(チームス)を使っています。Teamsでは、チャットによるコミュニケーションだけでなく、オンライン会議やファイルの共有もできます。

AIが私たちの働き方を変えてくれることもあります。Office365のパワーポイントを使っている方は、搭載されているAIが作成中のスライドに最適なデザインを提案してくれるのをご存じでしょうか。スライド上の文字を自動翻訳してくれますし、画像データをエクセルデータに落とし込んでくれる機能もあります。




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AIが働き方のログ(記録)を取り分析し、個人の働きざまにアドバイスしてくれるサービスもあります。「働きすぎです」「コラボレーションが少ないです」など、1週間に1回メールをくれるんです。このように、個人が悩む時間を減らしてくれるツールが次々にリリースされていますね。


「CHANGE」のビフォー/アフター


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堀内氏:時間当たりの生産性(売上げ/労働時間)はプラス224%、1人あたりの生産性はプラス202%になりました。社員を増やした訳ではありません。従業員数はマイナス7%で、残業もありません(業務時間、マイナス13%)。ペーパーレス化、なんと約8割も紙が減りました。コストの上でも喜ばしく、地球にも優しいですね。人間ってすごいと思います。必然に迫られると変わるんです。

かのダーウィンが言ったように、生き残るのは強い人や頭の良い人ではなく、変化に対応した人なんですよね。 平成元年にトップ30以内に軒を連ねていた日本企業は、それから30年後の世界時価総額ランキングには入っていません。マイクロソフトはトップ5に入ってきたレアな企業ですが、世の中の変化に対応しようと変化してきたのです。生き残るためには、変わることが必要です。皆さんにも、ぜひ、自分からできる「CHANGE」を行っていただけたらと思います。