イベントレポート REPORTS

プログラム(4)

全社員リモートワーカーな会社の働き方とコミュニケーション

大野 浩誠 氏

大野 浩誠 氏|東京大学理科Ⅰ類、東京大学大学院工学系研究科を卒業後、浜松へ帰郷。2015年より株式会社ソニックガーデン顧問プログラマーとして企業のシステム開発に携わる。


ソフトウェア開発ベンチャーのソニックガーデン。全社員がテレワークで働いているというその働き方と歴史について、浜松在住の大野氏が発表しました。



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大野氏:私が所属しているソニックガーデンは、東京に‟一応”本社があるソフトウェア開発の企業です。全社員は約40名で、そのうちの8~9割はプログラマーです。聞きなれない言葉かもしれませんが「納品のない受託開発」というスタイルで、メンバー全員で楽しく仕事をしています。

ソニックガーデンの特徴のひとつが、全社員がリモートワークで働いていることです(ソニックガーデンでは、オフィス外で仕事を行うことを元来リモートワークと呼んできました)。北は北海道、南は九州まで、18都道府県にまたがり多様なメンバーが働いています。私も東京から離れてこの浜松市に居住しながら在宅で働いていますし、シベリア鉄道でロシアを横断しながら働く人もたまにいますね(笑)

そうした働き方が新しいと注目され、今年の2月には「中小企業テレワークチャレンジ特別奨励賞(日本テレワーク協会)」をいただいたり、テレビに取り上げていただいたりしました。そんなソニックガーデンですが、2016年に思い切ってあるものを撤廃しました。何だと思いますか?

実は、本社を撤廃したのです。社長さえほとんど出社しなかったので、思いきって無くしました。先ほど“一応”本社とお伝えした自由が丘のオフィスは今、集中したいときに使えるワークプレイスとして機能しています。





顧問プログラマーの1日

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大野氏:私のワークスタイルは「顧問プログラマー」という職務に紐ついています。

ソニックガーデンの顧問プログラマーは、月額定額制による顧問スタイルでソフトウェア開発を行うシステムエンジニアです。お客さまに寄り添って少しずつ必要なシステム開発を行っています。この「納品のない受託開発」により、お客さまはICTシステムの導入を小さく始められ、ビジネスの方向性や成長に合わせて柔軟に開発できます。

そんな私の1日のスケジュールはこのようになっています(図を参照)。


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大野氏:小学生の娘に合わせて生活・仕事をしています。朝は6:00に起床して娘を送り出したら、8:00ごろから仕事を始めます。正午になったら昼休憩を取り、午後は13:00から仕事を再開します。15:00ころには娘が帰ってくるので、一緒に30分ほど休憩を取っていますね。夕方にまた2時間ほど仕事をしたら、私が夕食当番なので18:00から夕食を作り始めます。オフィス勤務の人と比べて、私は家族と過ごす時間が多いと思います

場所を選ばないで働けるのは、リモートワークのメリットですよね。プライベートと仕事を両立しやすいので、家族の負担を少なくできると思います。家事や育児がシームレスに行えますし、家族が病気になってもすぐに病院に連れて行ってあげられます。





ソニックガーデンのリモートワークと一般的な在宅勤務の違い

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大野氏:ソニックガーデンのリモートワークと(一般的な)在宅勤務には、コミュニケーションスタイルの違いがあると思っています。

良く挙げられる在宅勤務の欠点の多くは、孤独感が起きやすいとか仕事の進捗が把握しづらいといったコミュニケーション上の課題だと思います(ソニックガーデンではコミュニケーション上の課題の大部分を克服している)。私自身の業務を振り返ってみても、プログラミングの作業以外はコミュニケーションが必要な業務です。プログラミングも1人ではつまずくので、メンバーに助けてもらうためにコミュニケーションが必要になります。1日の7割をコミュニケーションに費やしている日もありますね。





全社員リモートワークへの道

登壇の様子

大野氏:ソニックガーデンは、大手システム企業の社内ベンチャーとして立ち上がりました。創業当初は親会社のオフィスを間借りしていたので、社員も一般的なオフィス勤務だったそうです。

それでも、創業間もないころから「働き方を柔軟にしたい」と考えていたようで、フォルダの共有にはDropboxを使い、音声通話にはGsiteを利用していたと聞きます。お客さまとの連絡にも、用件を簡単に伝えあえるような自作の掲示板ツールを利用していたそうです。

実際にリモートワークを始めたのは、東日本大震災が起きた直後でした。1人のメンバーから、海外に住みながら働きたいという声があがったんです。大きな震災があったことで、確かにリモートワークは必要だという判断になったそうです。これまで社内のチャットや掲示板ツールがあったお陰で、リモートワークが採用されることになりました。その後、社内ベンチャーから独立するときに、場所にはこだわらず良い人材がいれば採用しようということで2012年にリモートメンバーが初採用されました。

ただ、メンバーと拠点が増えるにつれて、リモートワークのやり方に変更が必要になりました。既存のツールは情報を伝えるものであって、コミュニケーションを取る機能はなかったためです。オフィスにいないときでも一緒に働いているような感覚が必要だと分かり、バーチャルオフィスツールの「Remotty(リモティ)」をリリースしました。ログインするとオンライン上でメンバーとつながりながら働けるネット上の職場です。


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大野氏:私たちも「Remotty」に入ることを「出社」と呼んでいます。電話や郵送物も東京のワークプレイスで受信してもらい、スキャンデータや通話記録を「Remotty」にアップしてもらっています。

「Remotty」がここまで機能してくると、物理的なオフィスがなくなっても支障はないだろうということで、本社を撤廃してワークプレイスに切り替えていったんですね。

最後に、大野氏は「賛否両論はある」としながらも、オンラインで行っているという“社内飲み会”の様子も披露しました。「飲み終わったらすぐ寝られますし、都合が悪くなったら『ちょっと回線が……』と言って切れば大丈夫です(笑)」

コミュニケーション上のデメリットを解消したソニックガーデンのワークスタイル。ICTツールにここまでできるのかと参加者一同は驚きを隠せない様子でした。