イベントレポート REPORTS

プログラム(5)

地方発ベンチャー企業が取り組むワークスタイル「ノキオスタイル」

小川 健三 氏

小川 健三 氏|株式会社NOKIOO代表。NOKIOOは今年で9期目となるITベンチャー。社員数23名中、男女比は6:4で女性社員の方が多い。女性活躍推進事業、IT開発支援事業、マーケティングソリューション事業を主軸とする。


地元のITベンチャーNOKIOOより、2011年の設立当初から行ってきたテレワークへの取り組みが紹介されました。地元企業にとって参考となるような、テレワークをはじめとする働き方改革への挑戦の歴史を小川代表が語りました。

小川氏:私たちは自分らの働き方を「ノキオスタイル」と呼び、2011年の設立当初から自分たちの働き方を創ってきました。働き方で勝負できる企業がこれからは強くなっていくだろうと考えてきたからです。





20世紀キーワードと21世紀キーワードを意識する

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小川氏:それぞれの時代にそれぞれの成長を担ったキーワードがあることに気付きました。整理してみると、図の通りです(上記参照)。

20世紀:いかに早く正確に情報を処理して正解を出すか
21世紀:ワクワク感や感性を活かしたティール型の組織づくりや企業運営ができるか

仕事の担い手がロボットやAIに取って代わられていきつつある今、人間が人間らしく力を発揮できることが求められています。21世紀キーワードを意識した仕事や職場づくりがますます重要になっているのではないでしょうか。
言うは易しで、NOKIOOで成功した取り組みの裏では、失敗した取り組みもたくさんありました。そんな紆余曲折も含めて、NOKIOOの挑戦を具体的に紹介していきたいと思います。





働き方改革を進める前に大切なこと

ノキオスタイルの説明

小川氏:働き方改革を進めるためには、ベースとなる「企業が大切にする考え方」をしっかり持つことが大切です。考え方と取り組みの整合性を取っていかなければ、せっかくつくった制度は形骸化して終わってしまいます。

オープン(マインド)
小川氏:新たな価値を創造するためには社内外のコラボレーションが必要で、そのためには心も情報もオープンにする必要があります。自分のことを理解してもらうことや企業の中の情報をなるべくオープンにすることが重要です。

性善説ベース
小川氏:人は、そもそも前向きで、適切な環境が与えられれば仕事をするものだというマインドセットが必要です。「あの人、仕事しているのかな?」「チャットに返事が来ないのは、サボっているのでは?」と相手を疑ってしまうのは、「人は管理しなければならない」という20世紀的な心構えがあるためだと気付きました。

もちろんセキュリティや制度の検討は必要です。万が一を予想して会社を守らなければいけない部分については、性悪説をベースに仕組みを考えなければならない部分もあります。

やり方を変える
小川氏:仕事のやり方を変えること、それも小刻みに。メンバーによって現場で変えられることも重要で、現場で変えるという考え方が組織に浸透してくと、組織全体の働き方はシフトしていきます。





仕事をデジタル世界に置く

小川氏:今やっている仕事は、デジタルに置き換えられないだろうかという思考をもつことです。デジタルに置き換えた仕事や情報は、再配分や検索が可能になります。

以上のような考え方の上に、ツールを導入したり制度を整備したりすることが企業価値を高める働き方改革になっていくのだと思います。





ワークスタイル3つの考え方 IT・ツール 環境・機会 組織・人

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IT・ツール
小川氏:オンプレミス(※)のサーバーは1年ほど前に廃止しました。クラウド上のストレージをファイルサーバーとして利用し、どこにいてもどんなデバイスからでも社内の情報にアクセスできるようにしていきました。



(※)オンプレミスとは|施設の構内に設置された機器を通じて企業などの管理者が情報システムを運用する方法のこと。自社システムとも。

ワークベースには、マイクロソフトのTeamsを採用しています。社内の情報がほぼTeams上に載っていて、メンバーはほしい情報を自分から取りにいけるようになっています。


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小川氏:その時々の状況に合わせて、ミーティングもオンライン/オフラインを自由に設定しています。ミーティングが設定されると、Teams上でアジェンダや資料を事前に共有します。「当日は、こんなことを話したいね」といったチャットからコミュニケーションが生まれる場としてもTeamsが機能しています。

社内のクラウド化を進めたことで、会計や総務といったバックオフィス業務もBPO(※)できました。定例会以外の日常のやり取りは、BPO先の担当者とチャットツール上で行ってます。外部のリソースもうまく使いながら、NOKIOO全体の業務を行っていくという状態をつくれるようになりました。



(※)BPOとは|Business Process Outsourcingの略で、コア以外の業務を外部の専門企業に外注・委託すること。


環境・機会


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小川氏:NOKIOOの考えを助長し、コラボレーションを促すオフィスづくりと運用を目指しています。フリーアドレスにすることで、NOKIOOがどう動いていくのかをメンバーが把握でき、隣の人とのコラボレーションが生まれるような環境にしています。

浜松駅の近くにはサテライトオフィスを構え、本社実務から離れることで創造的な会話ができる場としてメンバーが自由に活用しています。例えば、午後から遠方へ出張だという日には、午前中の仕事をサテライトオフィスで行えば移動のロスが削減できます。


サテライトオフィスの様子

小川氏:社員の働く場所が分散すると出てくるコミュニケーション上の課題は、ITツールで解決するようにしています。サテライトオフィスと本社は常時オンラインで繋ぎ、わざわざ電話しなくても画面上で声をかけて相談するといったことが可能です。

そして、非常に重要なのは、外部との接触機会をつくることです。お客さまや世の中のニーズをインプットするためにも、今日のようなイベントを主催させてもらったり、勉強会やイベントにメンバーを連れ出したりしています。


組織・人


ラウンドロビンランチの表

小川氏:1年間ですべての社員とランチに行く「ラウンドロビンランチ」という取り組みを行っています。2人のランチ代をNOKIOOが出すので「ちょっと雑談してきなよ」という具合です。社員同士で信頼関係をつくったり、お互いの人となりを知ったりする機会にしてもらっています。

外部の人が指名したNOKIOOのメンバーと一緒にランチに行く「NOKIOOランチセッション」も展開しています。採用目的もあったのですが、実際には、外部の人にNOKIOOの説明をすることで社員が企業理解を深める機会になっています。2年間で合計60件のランチセッションがあり、15件がエントリーに進みました

また、テレワークを実施する上では、客観的にものごとを見る思考法も重要なスキルになります。「全員、クリティカルシンキング」というスローガンを掲げて、思考のトレーニングも行っています。

こうした1つひとつの取り組みを通じて、NOKIOOは21世紀的な思考に基づいた働き方へとシフトしてきました。今ではようやく、社員同士や社外の人とのコラボレーションを生み出せる組織になってきたのかなと思います。





ノキオスタイルの経営面での成果

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小川氏:他社との比較は難しいものの、地方の中小ベンチャーとして人材母集団の形成力は向上したのではないかと思います。2019年1月から7月末までで、計62名がNOKIOOにエントリーしてくれました。1カ月に6~7名のエントリーを得られている計算ですね。

今では、遠方でも採用が進み、大分市と静岡市、富士市で計3名の社員がテレワークで働いています。テレワークの実施は、既存メンバーの転居にともなう離職の防止にもなっています。採用マーケットも、これまでの豊橋から掛川エリアから、静岡県の内外へと一気に広がりました

東京オフィス(東京都港区)で採用しようとしたときに全く採用できなかった東京の人材も採れるようになりました。「浜松でもテレワークしている企業」と発信したところ、30歳を目前にして帰郷しようか迷っていた首都圏の優秀な人材がUターン入社してくれたんです。


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小川氏:チームの状況が見えるようになったことで、メンバーを組織に縛らないプロジェクト型のチームづくりもでき始めていると思います。「ちょっとこのチームで困っているから、3カ月間だけ手伝って」といった、かなり柔軟なチームづくりが可能になりました


1人あたりの時間外労働時間(残業)も約42%削減されました。直近の2年間を1年単位で比較すると、1人あたり約17時間だった残業が、平均7.4時間にまで低減しています。


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1人あたりの売上高も増えています。2年前の1年間の売り上げを100とすると、直近の1年間の売り上げは115に(プラス15ポイント)。労働時間あたりの売上高も100から129へと約3割増しました。

私の中での「ノキオスタイル」の定義は、環境と状況に合わせて自分たちで働き方を変えられるあり方です。重要なのは、現場のメンバーがそれぞれ自分の働き方を変えて生産性を高めていけることだと思っています。自らの働き方を「生き方」として捉えて、理想の状態にシフトしていく組織になっていけたら良いなと思います。挑戦は、続きますね。